院長のコラム
- 2020/10/20
- 院長コラム
上気道と下気道
耳鼻咽喉科と内科の境界線
我々は絶えず呼吸をおこない、酸素を摂取して二酸化炭素を排泄しています。
吸気は、鼻からのど(上咽頭、中咽頭、下咽頭)を通り、喉頭に続き気管にはいります。
気管は二股に分岐し、どんどん細くなり細気管支になり最終的に肺胞に到達します。肺胞でガス交換が行われ肺呼吸が成立します。
鼻から喉頭までを上気道、気管から肺までを下気道と区別し上気道を耳鼻咽喉科、下気道を呼吸器内科が担当していました。また上気道の疾患と下気道の疾患は別個のものとして扱われてきました。
しかし、最近になって上気道の疾患と下気道の疾患は独立したものではなくお互いに関係したものであると考えられるようになりました。
よく考えてみると上気道と下気道は人が勝手に便宜上解剖学的に分けたに過ぎずひとつの呼吸器には変わりありません。
アレルギー性鼻炎と喘息
以前からアレルギー性鼻炎のある人に喘息が多く、逆に喘息のある人はアレルギー性鼻炎が多いということは分かっていました。
単なる偶然ではなくどちらの疾患もアレルギー性炎症であることにかわりなく、どの部分でアレルギー性炎症がおこっているかだけの違いです。
その部位が鼻腔であればアレルギー性炎症、喉頭なら喉頭アレルギー、気管支なら喘息という病態になるだけの話です。
最近では、くしゃみ、鼻水とから咳(乾性咳嗽)を訴えて来院される方が多いようです。アレルギー性炎症の30から40%に喘息(咳喘息を含む)を合併するといわれています。逆に喘息のある方は60%位アレルギー性炎症を合併するといわれています。
増える呼吸器アレルギー
さて、くしゃみ、鼻水、咳といえば風邪といって来院されるケースが多々あります。どちらも気道の炎症であるには変わりなくどうしても共通した症状が出るのは当たり前です。
しかし、風邪は体に有害なウィルスの感染による炎症でアレルギーは無害な物質の過敏性炎症です。風邪のほうが全身倦怠感や発熱などの全身症状が重くなりがちです。またウィルスの感染はそんなに度々繰り返さないのでたいていは自然に軽快します。
しかし、花粉などのアレルゲン(アレルギーを起こす物質)が持続的に入ってきますので症状がしつこくいつまでも続くケースが多いです。全身症状が軽く2週間以上風邪のような症状が続くようならアレルギーを疑うべきでしょう。
最近咳喘息も多く体調は悪くないのに激しい咳に悩まされる方もよく見ます。(ご自分で風邪薬などで治療されるようですが、たいてい悪化しますので要注意です。)
3週間以上続く乾性咳嗽の6割は、咳喘息やアトピー咳嗽のようなアレルギーによる咳嗽であるといわれています。
当医院ではまずアレルギーによる咳嗽であると考えてまずは、抗ヒスタミン剤や抗ロイコトリエン剤による治療を行っております。もちろん違う場合は、効果が見られないわけですのでその時は、別の治療や専門医を紹介させていただいております。
注目される第一関門としての鼻の役割
さて、話を元に戻します。上気道と下気道は別物ではないということですが、感染症でもそれは言えます。副鼻腔炎の場合がそうです。
長期に湿性咳嗽(痰のからんだ咳)がある、声がかすれるなどで来院される方がいますが副鼻腔炎が見つかる場合が非常に多いです。鼻は呼吸器の一番上位にあります。
また呼吸器の粘膜表面の粘液は、上方から下方に流れています。鼻は川で言うと最上流です。最上流が汚染されれば下流まで汚染されます。同じように副鼻腔炎があればその下位にある気道へ炎症は波及していきます。
咽頭炎、喉頭炎、気管支炎へと発展していくことがあり最悪の場合、肺炎に至ることもあります。副鼻腔炎の起炎菌は、肺炎球菌やインフルエンザ桿菌(インフルエンザを起こすのはインフルエンザウィルスです)が多くいずれも肺炎の起炎菌でもあります。
鼻は、呼吸器の第一関門です。外気を加湿、加温、濾過して下気道に空気を送り込みます。その鼻や周辺臓器である副鼻腔が感染してしまうと細菌で汚染された膿汁が咽喉頭から気管に入りさらに下気道に入り感染を広げていきます。
つまり、鼻が感染すると呼吸器全体が感染する可能性があるのです。
いくら喉を治療してもよくならないとか、気管や気管支の治療をしても、いつまでも咳が続く、あるいはいったん治ってもすぐに再発するなどという場合は、副鼻腔炎を疑ってみる必要があります。
呼吸器疾患において鼻の重要性が見直されています。
呼吸器疾患に罹患した場合まず鼻は健康かチェックする必要があります。副鼻腔炎も軽症の場合本人も気づかないため、原因が明らかになるのに時間がかかる場合があります。
当医院では、疑わしい場合は内視鏡やレントゲン撮影にて原疾患を見つけるよう努めております。
あなたの声のかすれや咳は、もしかすると鼻から来ているかもしれませんよ。ご注意ください。
これを読んで少しでも皆さんが正しい知識を得ていただき、健康の一助となれば幸いです。
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