堺市 鳳駅 原田耳鼻咽喉科

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院長のコラム院長のコラム

2020/10/20
院長コラム

風邪薬の中身は?

今回は風邪薬を取り上げてみたいと思います。


 なぜかというと来院される前に自己判断で風邪薬をお飲みになり症状の悪化や様々なトラブルを起こしているケースが目に余るからです。


 ここでいうかぜ薬とは、よくテレビCMで「早めの○○○○」、「くしゃみ3回○○3錠」、「効いたよね○○○○」、「あなたの症状に狙いを決めて○色の○○○ブロック」etc.と宣伝されている「総合感冒薬」をいいます。
(抗生物質は風邪の2次感染予防に用いられることがあり、風邪のウィルスには無力です。抗生物質は、ここではふれません。)


 CMではいかにも治療薬であるかのごとく宣伝され、飲めば健康になるというイメージが強く植え付けられます。本当に恐ろしいことです。


 総合感冒薬は、主に鎮痛解熱消炎剤、抗ヒスタミン剤、鼻汁分泌抑制剤(抗コリン剤)、鎮咳剤(コデイン製剤など)、去たん剤、無水カフェイン、気管支拡張剤(エフェドリン製剤など)などの合剤です。


 各社少しずつ成分は異なりますが大同小異で時に隠し味的に漢方成分を入れたり、喉の腫れを引かせる抗プラスミン製剤を入れたりしています。

風邪とはそもそも何なのか?

 かぜ薬の話に入る前にかぜとはなんぞやという話に入りましょう。


 一言でいえば「ウィルス」の急性の上気道感染症の総称です。


 原因ウィルスはRSウィルス、コロナウィルス、アデノウィルス、エコーウィルスなどです。(インフルエンザウィルスは、風邪と別扱いされていますのでここでは省きます。)


 ウィルスは上気道に吸い込まれると鼻の粘膜に付きます。


 しかし、粘膜は粘液(鼻汁)で覆われており、粘膜表面の絨毛の働きによりベルトコンベアのように咽喉のほうへ進んでおりますのでそれに乗って咽喉に運ばれ胃に入って胃酸により消毒されます。


 ですが、何らかの理由で粘液に運ばれずに粘膜表面に吸着すると粘膜細胞に取り込まれて増殖します。そのまま増殖を続けると次々と粘膜細胞は、荒廃していきます。


 人体は、複雑な免疫機能を持っています。


 免疫機能は病気から人体を守る軍隊そのものです。


 ウィルスをとらえ情報を収集するもの、その情報をもとに抗体をいうウィルスに対する武器を作るもの、感染した細胞そのものを貪食するものそれぞれが役割分担をおこないウィルス感染を駆逐します。


 免疫細胞がやってくると炎症を起こして喉が腫れ痛みます。

 ウィルスは熱に弱く、免疫細胞は温度が高いほど活動しやすいので免疫活性と同時に体温が上昇します。鼻腔内のウィルスを排除しようと鼻水を多量に出してくしゃみをして鼻汁を体外に出します。のどや気管支に入ったウィルスを排除しようと痰を多量に分泌して咳をして痰を喀出します。


 ウィルスと戦うことに集中するために全身倦怠感を引き起こし、体を休ませようとします。ウィルスに対し免疫軍が大勝利しウィルスが駆逐されるとかぜが治るのです。


 インフルエンザのようにウィルスに対して直接効く薬はありません。


 つまりかぜの治療薬は存在しません。


風邪薬(総合感冒薬)の功罪

 それではいったい総合感冒薬はなにをするものでしょう。


 それぞれの成分によって風邪の症状を緩和するものです。


 熱を下げのどの痛みや腫れを抑え、咳や鼻汁分泌を抑えあたかも治ったような気分にします。要するに「症状緩和」です。


 ここで賢明なあなたなら気づかれたことでしょう。


 これってかぜの治癒過程の全く逆をいくものだと。


 その通りです。


ウィルスとの戦争で勝利しないといけないのに、免疫軍の作戦をことごとく抑え休戦状態にします。


 熱を下げるとウィルスの増殖を促すと同時に免疫細胞の活動を抑制します。咳を抑制すると気道のウィルスが減りません。鼻汁を減らすと粘液のベルトコンベアーが止まり、ウィルスが粘膜に吸着しやすくなります。それと同時に細菌感染も合併しやすくなります。


 残念ながら総合感冒薬はかぜの治りを妨害します。


 かぜの治療は、十分栄養と水分を摂って、暖かくして安静にすることにつきます。


 では総合感冒薬の存在意義はないのでしょうか?


 ないことはありません。しかし特別な場合のみです。


 誰だってあるでしょう。
「今日は大切な取引のために重要人物に会うので咳をするわけにはいかない。」、
「受験で鼻水をたらして受けるわけにはいかない。」、
「熱を出して頭がぼうっとしていたら、出世がかかっている大切なプレゼンができない。」
など、どうしてもその場限りでいいから症状を止めたい時があるでしょう。
その時に利用するのはやぶさかではありません。


 しかし、後に悪化することもあるので連用はやめて養生に専念しなければなりません。


 総合感冒薬は治療どころか風邪の免疫を抑制する薬であると十分認識しなければなりません。


 風邪が治るのは、あなたの体自身がウィルスを退治して体を修復するのです。決して薬ではありません。


 そこのところを十分ご理解していただきたいと思います。

※ただし、2週間以上風邪の症状が続く場合は、副鼻腔炎、扁桃炎、喉頭炎、気管支炎、肺炎、アレルギー性鼻炎、気管支喘息が考えられますのですぐに医療機関に受診してください。 この際も総合感冒薬は病状を悪化させる可能性がありますので、服用しないようにしてください。

 これを読んで少しでも皆さんが正しい知識を得ていただき、健康の一助となれば幸いです。

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